とくしカフェ(ブログ)

中教審から特別支援教育の報告が出ました

20117月から行われてきた中教審の特別支援教育の在り方に関する特別委員会の「合理的配慮等環境整備検討ワーキンググループ」から2012213日に報告が出ました。

 障害別に「合理的配慮」を定義することを目的に調査・審議が重ねられてきました。

 ワーキンググループは、次のように述べています。


○本ワーキンググループにおける「合理的配慮」とは、「障害のある子どもが、他の子どもと平等に「教育を受ける権利」を享有・行使することを確保するために、学校の設置者及び学校が必要かつ適当な変更・調整を行うことであり、障害のある子どもに対し、その状況に応じて、学校教育を受ける場合に個別に必要とされるもの」であり、「学校の設置者及び学校に対して、体制面、財政面において、均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」、とする。なお、障害者の権利に関する条約において、「合理的配慮」の否定は、障害を理由とする差別に含まれるとされていることに留意する必要がある。


○「合理的配慮」の決定・提供に当たっては、各学校の設置者及び学校が体制面、財政面をも勘案し、「均衡を失した」又は「過度の」負担について、個別に判断することとなる。各学校の設置者及び学校は、障害のある子どもと障害のない子どもが共に教育を受けるというインクルーシブ教育システムの構築に向けた取組として、「合理的配慮」の提供に努める必要がある。その際、現在必要とされている「合理的配慮」は何か、何を優先して提供する必要があるかなどについて共通理解を図る必要がある。


 障害に応じた配慮が平等な権利として保障されるべきことを提起したことは評価できますが、何が差別にあたるのかを明確に定義していないため、差別禁止の観点が弱いと言えます。このことは、合理的配慮の提供が、“
各学校の設置者及び学校が体制面、財政面をも勘案し、「均衡を失した」又は「過度の」負担”にならないように個別に判断されるという見解に表れています。障害のある子どもの合理的配慮は、本来、学校や行政側の「負担」ではなく「本人の過度な負担」にならないことが前提であり、子どもの権利保障が財政的な理由で損なわれることがあってはりません。残念ながら今回のワーキンググループの報告は、「現段階で学校・行政が可能な限り個別に判断して、合理的な配慮を進める」という提言にとどまり、国や行政が責任を持って財政的な支援も含めて合理的な配慮を実現するという内容になっていないことを指摘しておきます。
   
                  北海道教育大学札幌校 千賀


合理的配慮等環境整備検討ワーキンググループ報告(概要)
平成24213

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/046/attach/1316182.htm


 

 

 

2012/02/21
権利条約の条文中にある”not imposing a disproportionate or undue burden”は、「障害のある者に不釣り合いなかつ過度な負担が課されないように、、」と解釈するものと思っていましたが、「設置者側の負担」の抑止を図るものという解釈なのですね。