1.上川版個別の支援計画“育ちと学びの応援ファイル「すくらむ」”作成の背景
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発達障害が投げかける大きな課題は、人生早期には発達障害の把握がなされず、
後年になってから不適応に陥って、事例化する方々の困難さに認められます。
不登校に陥ってしまったり、虐待体験が重なることで、さらに適応が悪化して
しまう子どもたちの存在もある。社会に出るまで大きな問題はなくても、
職場で不適応に陥ったり・・・。
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だから発達障害の早期発見(把握)が求められます。
しかし、それは容易ではありません。
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小中学校の通常学級で特別支援ニーズを持つとされた未診断の子どもたち。
この子どもたちの中で、乳幼児期の健診で発達リスクを指摘されたのは、
ごくわずかでした。この状況を打破するには、乳幼児検診での発達障害の
発見率を上げるしかないのでしょうか。
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確かに、発達障害の子どもをもつ親を対象とした過去の乳幼児検診に関する
北海道調査でも、乳幼児検診での把握以前に親は子どもの異変に気づいています。
そして診断時期はそれよりもさらに遅くなっています。しかし、乳幼児検診
における発達障害の発見率を上げることは簡単にできるのでしょうか。発見精度の
高いスクリーニングツールを開発することで問題は解決するのでしょうか。
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健診担当者の側にも理由はあるようです。つまり、リスクを把握していても、
乳幼児検診でそのリスクを親御さんに伝えづらい状況があるのです。
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早期把握は必要。過去を振り返れば、親御さんもそう思う。でも乳幼児検診
の頃の親御さんの気持ち、子育てに不安を感じている気持ちに「早期把握」は
うまく馴染まない。発見精度を上げるだけで、解決に向かうのでしょうか。
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早期支援に必要なことは、発達障害リスクを示す子どもだけではない。子育て
不安の中にいる親御さんにも支援が必要。親御さんの支援を障害ラベルが妨害
する場合もある。親御さんが望んでいるのは、親子で楽しく過ごし、安心して
子育てができることではないでしょうか。だとすると早期支援の進むべき道は?
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早期支援が進むべき道は②です。しかし、②の方向性は「診断が必要ない」
とか「療育が必要ない」ということではありません。「子育ては大変だけど、
なんとかやりようがある」という安心感をとにかく持ってもらいたい、その
ための支援がまずは必要ということなのです。そんな地域を実現していくべき
と考え、私たちは「すくらむ」を作成しました。
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地域連携とは、その親とその子に対する理解の輪を広げていくことであるべき
です。けっして障害特性に起因する課題を伝達していくことではないはずです。
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ほくとくネット_すくらむ_01.pdf
北海道教育大学 旭川校 安達 潤