Q 程度にもよるが、自閉症の子のために授業を作るには、新たな情報以外はいつも同じであった方が良いと授業でおっしゃっていたが、普通の子はいつも同じだと飽きてしまうと思うので、自閉症の子と通常の子が同じ教室でどちらも楽しく受けられる授業はあるのでしょうか。
A 質問にある「いつも同じ」つまりパターンやルーティンは子どもを飽きさせるのではないかという点についてですが、私は、今の学校はルーティンが少なく、不安になっている子どもが多いのではないかと逆に心配しています。
昔に比べ先生方の授業スキルも向上していると私は思っていますし、使える教材・教具も豊富化、高度化しています。
しかしながら、毎回趣向をこらして授業をすることによって、一時的には子どもの注目は引きつけることはできますが、長続きしませんし、本当に身につけなければならないことは実際は単調で反復的な作業を伴うものなので、おろそかになってしまうのではないでしょうか。
授業は、お祭りのようなイベントではないと私は思います。学びにはたしかにワクワクやドキドキは必要ですが、それはきっかけに過ぎず、むしろそこから本当の学びが始まるのです。学びの大半は、昨日よりも今日、今日よりも明日という小さな自分の進歩が見えるような環境において行われるものなのではないでしょうか。
子どもが頑張ろうとする動機は、好奇心ばかりではないのです。「できた」「わかった」という確かな感覚が重要なのではないでしょうか?
子どもたちが自分自身の進歩に気づくためには、いつもやっている、当たり前のルーティン作業(ある程度安定した環境)が必要だと私は考えます。
目新しい教材・趣向を凝らした台本ばかりでは、子供たちは自分の位置を客観視することが難しくなります。なぜなら変化の多い授業の連続では、基準が不明確になってしまうからです。
大事なことは、身につけなければならない「アカデミックスキル」「考え方」を、大人が責任を持って明示的に教えること、「アカデミックスキル」「考え方」について子どもが思う存分に試行錯誤できる時間を保証してあげることです。
もし子どもが飽きてきたら、そのうち子どもの方から「新しいことをしてほしい」と要望が出てくるはずです。それが新たな展開の時期なのではないでしょうか。若い先生や経験の少ない先生は、子どもの注意を何とか引きつけたくて、イベント的な授業をやってしまう傾向があると思います。
発達障害の子供たちは、一番最初にその環境に適応できなくなってしまうことが多いので、目立っているだけなんですね。
つまり発達障害の子に合わせた授業というのは、特殊な授業なのではなく、誰もが自分の手持ちの力を使って取り組める主体的な授業にするということなのです。