Q 図工の際、自分の作図と作品がうまく一致しないときに、自閉症の子はどのような反応を見せるのですか。またどのようにフォローすれば良いですか。
A 先生がはじめから完璧な結果、つまり優秀な作品をモデルとして見せてしまった場合には、自分が作成した作品と、モデルとの差が大きすぎるので、早々に落胆してしまうことになります。
彼らは「ちょっとの失敗も許せない人」との烙印をおされて、段々と図工から離れざるを得ないことになってしまいます。なるべく現実と理想の差分を小さくしてあげれば、「乗り越えられるだろう」という予感を高めることができるかもしれません。
私が以前行ったことを例としてあげましょう。
「あなたたちは、これから七宝焼きを作ります。小さなペンダントに絵を描くのは大変難しいことです。上手に描けるというのはこれくらいだとAランク、ちょっと下手だとこのBランク、もう少し下手だとこのCランクになるでしょう」というふうに、その子ども達の能力に応じて、それぞれに相応したモデルを複数提示しました。
次に、制作に入る前に「自分は何ランクだと思いますか」と予測させました。そうすると子ども達はわりと正確に、自分の実力に応じてランクを選んでいました。
最初の目標設定が実力に相応したものであれば、途中で投げ出す子が少なくなることにも気づきました。
つまり、工作に限らず、自閉症の子がちょっとの失敗にくじけたり、一番じゃなければ許せないというのは、大人が理想像しか伝えていないことが大きな要因だと、私は考えています。
上達するプロセスには、色々な段階があり、しかもそれぞれの段階は個性として受け入れられるものだということが、保証されていない環境では、「やっぱり先生と同じくらい上手に作れない、自分はダメだ」と思ってしまうんですね。
子どもの能力からかけ離れたモデルは、子どもに無言のプレッシャーを与えているんだろうと思います。